サンゴ・マングローブで「天然防波堤」再生へ

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22万人が犠牲になったスマトラ沖大地震から26日で3年を迎えるインドネシアのスマトラ島で、サンゴやマングローブを再生する取り組みが広がっている。津波や高潮から集落を守る「防波堤」の役割が期待でき、魚介類の繁殖場所にもなるからだ。かつて各地に繁殖していたが、開発や津波の被害で激減した。震災をきっかけに存在価値が見直されている。
考案したコンクリート礁を使い、サンゴを移植するドデンさん=インドネシア・ウェ島で
海岸の近くに植えられたマングローブ=インドネシア・バンダアチェで
バンダアチェから高速船で約1時間。ウェ島には、静かな浅瀬が広がる。ダイビングショップを営むドデンさん(55)が、1メートル四方のコンクリートの繁殖床にサンゴの枝を固定する。頻繁にコケや貝を取り除く手入れをしながら育てる。独自に考え出したサンゴの再生法だ。島は、04年の地震と津波で多数の家屋が損壊。沿岸部に生息していたサンゴも大きな被害を受けた。ただ約2万4000人の人口のうち、犠牲者は十数人と比較的少なかった。「サンゴが津波の力を吸収したことが人的被害を最小限に抑えられた一因だ」とドデンさん。
サンゴの防災機能は学術的にも注目される。米アリゾナ州立大などの研究チームは05年、スリランカの沿岸部を調査。爆薬によるサンゴの違法採掘や漁業が日常化していた地区は津波で壊滅状態だったが、そこからほど近く、海岸線の形状の似る地区では、観光業者がサンゴを手厚く保護しており、被害は軽かった。
06年に再生の取り組みを始め、約200万円をつぎ込んだドデンさんは、防災効果に加え、生態系を回復する願いもサンゴに込める。魚が繁殖場所にするサンゴが壊滅したことで漁獲高が減り、約7割の漁民が失業したままだという。
マングローブの防災機能も注目を集めている。東北学院大や東北大などの研究チームは、バンダアチェなどで津波の高さとマングローブの植生、犠牲者数などを調査し、「十分なマングローブ林があれば、6メートル以下の津波から集落を守ることが可能だ」と結論づけた。
スマトラ島では60〜70年代からエビの養殖場開発が進むなどしてマングローブの自然林が次々と伐採された。研究チームはバンダアチェの調査地点でのマングローブ林は03年時点で、自然な状態と比べ、12%だったと推計。自然林が残っていれば、津波の高さは最大で73%減少することが判明した。また「死者の半数近くを救えた可能性がある」と指摘する。
研究チームの宮城豊彦・東北学院大教授(環境地形学)は「マングローブ林の防災機能が証明できた。今後、継続的な植林に加え、地域社会が林を維持する仕組み作りが必要になる」と話す。
植林の動きは被災地に広がる。ナングロアチェ州内のマングローブ林は津波で35万ヘクタールから22万ヘクタール程度に減ったが、政府が植林に乗り出し、7000ヘクタール以上が回復したという。
日本赤十字社は、今月から2カ年計画で、州内の12村で約120万本、計600ヘクタール規模の植林に取り組む。大岩豊・インドネシア首席代表(60)は「エビ養殖場として生活の糧になっている場所への植林は難しい。大規模な用地を探し出すのが課題だ」と話す。
http://www.asahi.com/science/update/1222/TKY200712220185.html