おとぎの島に歴史の影

パラオの別名「ベラウ」は「おとぎ話」という意味。w
ロングビーチは有名よっ!w
おとぎの島に歴史の影(ロックアイランド=パラオ共和国)
赤道に近い太陽が強烈で、空が暗く見える。ボートのへりに腰かけ、地球を逆さまに海へ飛び込んだ。光が淡いエメラルド色の水に遮られ、小さな気泡が焼けた皮膚を優しく包み込む。
日本から真南に3000キロ。大小300を超えるジャングルに覆われた島々は、年間2万人以上の日本人が訪れる。時差のない常夏の楽園、ミクロネシアにあるパラオ共和国は、チャーター便で4時間という近さだ。
1994年独立の新しい国は日本と縁が深い。第1次大戦後は日本が約30年統治。今も「ダイジョウブ」「シンブン」「ヤキュウ」などの言葉が残る。当時は多くの日本人が移民し、日本人街もあったという。
食事も日本文化が浸透し、売店には「ベントウ」や「ムスビ」が売られている。新鮮な魚介類や果物など、食べ物には困らない。
中でも変わっているのがパンの実。パンといってもココヤシに似た果物の一種だ。焼くと本物のパンみたいに香ばしく、ほくほくとおいしい。島には、パンの実に関する不思議な伝説も残っている。
昔々、ジブタルという島に魚好きな母親がいたが、息子が旅に出たため食べられない。自分の庭にあるパンの木の実だけを食べていた。戻った息子に訴えると、息子はパンの木の枝を折る。すると、枝から海水があふれ、魚が飛び出てきた。この話が村に広がり、ねたんだ漁師が木を切り倒した。切った幹から海水が激流となってあふれ、あらゆる魚が飛び出す。ついには島は沈んでしまったという。
実際、国際空港のあるバベルダオブ島の東海岸の沖合には、海底に石の小道など村の残骸(ざんがい)と思われる不思議な風景が残っている。地殻変動で沈んだ島を目撃した人々が、民話にして後世に語り継いだらしい。
◎
パラオはダイビングの名所だが、最近はのんびり島を巡る人も増えた。現地で旅行会社を開く田仲秀基さん(32)は「夫婦や仲間で来る団塊の世代は、ダイビング以外が目的の人も多いです」と言う。
島を巡り、昔、お金の代わりに使われたという山の中にある巨石「ストーンマネー」や、がけに描かれた壁画、数万のクラゲがすむ池などを見た。世界でも珍しいクラゲの池では、泳ぐこともできた。天敵がいないので毒がなくなったという。素潜りで底から見上げると、無数のクラゲの傘が光に透けて、幻想的だった。
一方、ここには太平洋戦争で亡くなった日米合わせて約2万人が眠っている。小島をカヤックで巡るツアーでは、日本の戦闘機の残骸を見た。水面から出たプロペラはさびることなく、弾丸の穴が生々しい。プロペラにハートマークの落書きが彫り込まれていた。開放的な島に、悲惨な歴史の証言が横たわっていた。
◎
最終日、とびっきり美しいビーチが見たいと思い「ロングビーチ」へ行った。コロールの港からスピードボートで40分。潮が引くと出現する時間限定の白い砂浜が、一本の緩いカーブになって浮かび上がった。
小さな雲に隠れた太陽から漏れた光のシャワーがスポットライトのように砂浜を照らしてこちらへやってくる。生まれたてのビーチが、ここでは毎日作られている。
パラオの別名「ベラウ」は「おとぎ話」という意味。まさにそんな夢の風景だった。
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/world/abroad/20070611tb03.htm?from=os1