「橋」のある宮古諸島、「橋」のない八重山諸島〜ハシなくも表れた両

「橋」のある宮古諸島、「橋」のない八重山諸島〜ハシなくも表れた両地域の住民気質〜
沖縄の南に位置する宮古諸島と八重山諸島に、「橋」をめぐって面白い現象がある。
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まず、宮古諸島から見てみよう。宮古諸島は八つの島からなり、その中心が宮古本島といわれている宮古島である。宮古島の周囲にある池間島、来間島には、橋が架っている。宮古島と池間島の間は1.4キロの距離で、島は馬蹄形。面積2.77平方キロ。来間島とは1.5キロ離れており、その周囲の距離は6.42キロ。島は円形。この二島に美しい橋が架っている。
池間大橋は1992年に完成、全長1、425メートル。完成と同時に一躍、観光名所になった。橋を渡ると、お土産品店や飲食店などがある。観光バスやレンタカーで来る人が増えた。島の人たちの悩みは、島外から持ち込まれるゴミの不法投棄。「以前に比べたら不法投棄は少なくなったが、まだ捨てる者がいる」と島の人たちは嘆く。
池間島は漁業の島。漁業で高収入を得ていたので、農業は顧みられなかった。そのため、土地の登記簿には明治時代から所有者がまったく変わらず、そのまま放置されている土地も多く、土地改良事業も手につかない状況だ、という。
その漁業も今では衰退している。以前はカツオ漁が盛んで、多くの若者たちが島に残り、漁業に従事していた。そのカツオ漁船もたった一隻だけになった。カツオ節の加工場もなくなり、今はカツオを鮮魚として販売しているだけである。
現在、島の人たちはサメの加工場やダイビング、グラスボートなど観光事業に活路を求めている。池間島周辺の海は透明度が高く、ダイビング愛好家には魅力的なところである。近くには旧暦3月3日前後の大潮のとき、年に一度だけ浮上する八重干瀬(やえびし)がある。その周囲は25キロもあり、大規模な礁原である。八重潮の魅力を活かした事業も展開されている。
もう一つの橋、来間大橋は1995年に完成。50トン級の船が往来できるように、橋の中央部分は約14メートルの高さになっている。宮古島の南西1.5キロの所に位置する。橋が無かった時代は、渡し舟の船頭さんが郵便物を届けていたが、今は郵便局から直接、配達されている。橋からの景色はパノラマを見るような絶景で、ドライブを楽しむ宮古島の人たちや観光客の人気スポットになっている。お土産品店や休憩所など観光客相手の商売が増えた。農業用水も地下ダムから送られ、農業も盛んになった。
2012年度の完成を目指す伊良部島への架橋工事が、2006年度から本格的に行われる。この橋の長さは3、590メートル。完成すれば、通行料金を徴収しない橋としては日本一長い橋となる。現在、料金を徴収しない橋で一番長いのは、山口県の角島大橋を抜いた古宇利大橋である。この橋は、今帰仁村の古宇利島と名護市の屋我地島と結んでいる。
伊良部島と下地島とは約10メートルから20メートル前後の5つの橋で結ばれているが、利用者はほとんど橋の存在を気づかずに往来している。下地島にはパイロット訓練のための飛行場があり、最近まで民間機が就航していた。軍事利用の計画が度々、持ち上がり、問題になっている。
宮古の住民の間では、架橋に反対の声もあったが「島の発展には欠かせない事業だ」との主張に、反対論はいつの間にか消えた。宮古島市立博物館の砂川玄正館長は「宮古の人たちには苦しい時は協力して、苦境から立ち上がった歴史がある。政争など激しい対立もあるが、宮古全体のためとなれば、お互いの争いを超えて一つにまとまる傾向がある。橋が出来て、宮古全体のため良いとなれば、個人の立場を超えて一致団結し、架橋実現に向けて取り組んだ」と説明している。
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さて、八重山諸島は、どうなのか。架橋で島々を結ぶ宮古とは逆に、八重山では離島への架橋がない。1972年、沖縄国際海洋博覧会を機会に島々への架橋計画が持ち込まれたことは、あった。
提案したのは、石垣島出身で早大総長などを歴任した大浜信泉氏。大浜氏は当時、沖縄海洋博協会長。計画は石垣島から竹富島―嘉弥真島―小浜島―由布島―西表島までの島々を橋で結ぶ壮大なもので、全長は33キロに及ぶ。マスコミは「夢の五橋」と報道した。
しかし、漁民から「漁場が荒らされる」「ゴミの不法投棄が増える」など反対論が出て、白紙に戻った。以後、計画は立ち消えに。
現在、竹富町役場では観光リゾート開発が進めており、西表島―由布島―小浜島への架橋計画がある。しかし、予算化のメドも立っていない。竹富町役場に問い合わせると「どうなるか、分からない」という返事。「橋」は宙に浮いたままだ。
石垣島と竹富島とは6キロの距離だが、橋を架けると「島が荒らされる」という反対の声があり、実現の見通しはない。竹富島は「民芸の島」「歌の島」などとして有名で、島を訪れる観光客は多い。
八重山の島々を結んでいるのは、高速船や貨客船である。乗客がいなくても、高速船は定時に出航する。観光客がよく訪れる竹富島、西表島、波照間島、黒島、小浜島への定期便は、整備されている。船舶会社が多く、競争も激しい。高速船の規模は50人乗りから180人乗りまでさまざま。観光客から人気がある竹富島や西表島への高速船は、各社が1時間にほぼ2便出している。石垣島を起点として各離島と結んでいるが、八重山観光フェリー(株)によると、小浜島と竹富島、小浜島と大原(西表島)の島と島を結ぶ観光客相手のコースもある。
宮古島は架橋で、八重山は高速船による海上交通で、それぞれの離島を結んでいる。架橋で島々を結ばないことについて、石垣島で出版活動をしている南山舎の上江洲儀正社長は「八重山の人たちは、冷たいと言われるほど、個を確立しようとする面がある。長年、対立が続いてきた石垣飛行場問題にみられるように、島の発展と説明されても、なかなか一致団結できない」と説明している。